コラム

2025年10月14日
 ネット上にあふれる言葉や画像に多くの人が右往左往する。「本当に良い話」であればいいが、「つくり話」もあっという間に伝わるから始末が悪い。真実がどうなのかという疑いの気持ちを常に持ち、調べる能力を備えるべきだ▼「いつからこんな世の中に」という人も多いが、スタイルは違えど昔も口伝えの噂話に尾ひれが付いて、争いにつながったことがある▼建設の現場も大きく進歩している。測量の機器や建設機械は新しい時代に即したシステムを搭載して、従来型の調査や施工も変わりつつある▼「しかし」という人がいる。現場の地形によっては正確なデータを求めるための補足調査が必要。「手間がかかる」が、複数の技術者が現地を歩く従来の手法で再度調べる。「機器はもっと進化するが、基本的な人の技はまだ欠かせない」と話す。(鷺)
2025年10月10日
 原稿を書いていると、ふと目がかすんだ。画面を凝視し、光の粒を追い過ぎたせいなのだろう。家族が差し出したホットアイマスクに目を委ねると、温もりが闇の奥まで届き、心のわだかまりも静かにほどけていった▼見ることは、創造の原点だ。印象派の巨匠モネは、終生光を追い続けた「目の人」だった。晩年、白内障で視界が霞んでも、記憶をたぐり寄せながら、睡蓮の池に無限の色を見出したという▼建設の現場もまた、見る力を要する仕事だ。安全への目配り、デジタル機器とのにらめっこ。知らぬ間に疲れは積もり、心身の不調につながる▼きょう10月10日は「目の愛護デー」、そして「世界メンタルヘルスデー」。たまには、あふれる光と情報から少し離れ、何も見ない時間を持ってみたい。見えない闇の静けさが、次の創造を照らすかもしれない。(鸛)
2025年10月9日
 「サナエノミクス」なる造語を巷でよく聞くようになった▼自民党の新総裁に就いた高市早苗氏が掲げる経済政策で、同氏の書籍に記載がある。アベノミクスを継承し、積極的な財政出動や金融緩和を志向する期待感から、日経平均株価が上昇。総裁選は小泉進次郎農林水産相が優勢とみられていただけに、高市新総裁の誕生は「ポジティブサプライズ」になったようだ。総裁選では「日本列島を、強く豊かに。」と題し、公共事業を地方に行き渡らせ、日本の経済成長を促すと強調しており、業界への恩恵が期待される▼足元では、人手不足などに伴う入札不調が相次ぐ。サプライズ級まではいかないだろうが、一定の事業量が発生した場合に備え、官民で受注体制などを議論しておきたいところだ。(鴛)
2025年10月8日
 リーダーシップ研究の大家である三隅二不二(みすみ・じふじ)は、優れたリーダーたる素養を、彼・彼女が他者に及ぼす影響の中に見出した▼卑近な言葉で言えば「頑張ろう」「明日もここにいたい」という感情を呼び起こせるか否か。そのために腑に落ちる明確な目的を与え、人間的な好意を健全に受け取る人物像を思い描いている▼結果ありきで方法は様々。とにかく弁が立つ者もいれば、手技で見せる職人気質なタイプもいる。ただ今日的に求められるリーダー像は極めて純化していると、冒頭の三隅から薫陶を受けた識者は言う―すなわち「信頼できる発信者」だ▼次期首相がほぼ当確も、背負って立つ党は未だ政治不信を払拭できないまま。願わくば「明日も頑張ろう」と思えるメッセージを届けてほしい。(鵯)
2025年10月6日
 朝晩が涼しくなり、布団を被って寝ないと寒さすら感じる。あれだけ暑かった日は一体どこに行ったのか。恋しさはさすがに感じないが▼涼しくなるにつれて心配なのが身体のあちこちの痛み。筆者は腰痛持ちのため、毎朝目覚めた際には起き上がり方に気を遣う。急激に起き上がれば悪化させてしまう。動作は慎重になりがちだ▼現在、全国労働衛生週間が展開中だ。取り組みの中でも腰痛災害の対策などはうたわれている。腰はすべての動作に通ずる。ストレッチを取り入れている企業も多いことだろう。腰を労わることが健康への近道と感じる▼別の涼しさを感じる季節でもある。この時期は工事・委託の発注が落ち着く。年度末にかけて毎年国補正が付くが、今年はどうなるか。懐はいつの時期も温かいほうが良い。(隼)
2025年10月3日
 月日の語呂合わせから制定される記念日は数多くある。今日10月3日「と(10)ざん(3)」は登山の日。1905年の10月に日本山岳会が発足し、語呂合わせから制定された▼登山の歴史を振り返ると、古代の「信仰登山」から近代の「スポーツとしての登山」へと大きく変化していった。ヨーロッパでは18世紀後半から近代登山が始まり、明治時代にヨーロッパの登山家が来日したことをきっかけとしてスポーツとして広まった。現代では、スポーツのほかにも趣味や観光、健康増進など多様な目的で楽しまれ、登山の価値というものが大きく変わっている▼山での現場が多い建設業。それに親しむため登山を定期的に行う建設企業も中にはいる。山岳地域のインフラ整備は必要な役割を果たし、安全な登山を実現する。(鴎)
2025年10月2日
 SNSの普及によって、語句や言葉の使い方に影響がある―そう答えた人は9割近くに上った。文化庁が発表した24年度の「国語に関する世論調査」の結果が興味深い▼文字や語句にどのような影響があるのかは、「略語が増える」が最も多く、言葉の使い方でも「短い言葉のやり取りが増える」を挙げる人が多かった▼昔から略語や短文化は若い世代がリードしてきた。だが、使い方によっては眉をひそめる場面も。特に新聞記事に話し言葉をそのまま使うのはよくない。また、調査では言葉の意味もたずねている。あいさつで間違いやすい「役不足」は、本人の力量に対して役目が軽すぎるが本来の意味▼SNSとは無関係だが、略語は業界の中にも多々ある。「あいみつ」もそう。相見積もりを「なるはや」で。いや、失礼。(鷲)
2025年10月1日
 気が付けばもう10月。10月と聞くと一気に秋へと変化することで、季節の変わり目を感じた。しかし、近年では9月に入っても真夏日が続き、時に急激な寒波が訪れるなど不安定だ▼気候の不安定さが、衣替えに影響を与えている。伝統的な「一斉に切り替える」から「柔軟に調整する」へと変化しつつある。従来の衣替えは、夏物をしまい、秋冬物を一気に出すスタイルが一般的。しかし今は、気温の変動に合わせて段階的に衣類を入れ替える「スライド式衣替え」が主流になりつつあるとのこと▼衣替えの変化は、温暖化という地球規模の問題が、生活にも密接に関わっていることを教えてくれる。気候の不安定さは働き方にも影響を与え、建設業でも真夏に工事をしない「夏季休工」の導入が検討されている。いつもの衣替えが環境変化に気付くきっかけにもなっている。(雛)
2025年9月29日
 サルビアの花が再び色を付けた。春から秋まで咲く花だが、夏の強い日差しや高温多湿に弱いため7月に入ってから日陰に移動したのが良かったのだろう。彼岸を過ぎたこの頃になって花芽が出てきた▼この花の英語名は「賢人」を意味すると聞く。花言葉の中には「知恵」や「尊敬」がある。厳しい猛暑に少しも慣れない人や植物も多いが、この環境を耐え抜く知恵を持ち合わせているのか▼局地的な豪雨に加えて竜巻による被害も各地で発生。リアルな映像を見ると驚くばかりだ。今月初めには記憶にないほどの激しい雷雨を鳥取市内で体感した▼市街地を走る道路は短時間で冠水するなど、安全対策が届いていない場所は身近にあることに気づく。想定外の気候に立ち向かう土木の知恵はもっと出でくるはず。地域の守り手としての役割は大きい。(鷺)
2025年9月26日
 かつて夢中で読んだ江戸川乱歩が今年、没後60年を迎えた。改めて、日本の探偵小説の先駆者を偲びたい▼乱歩は、人間の闇や狂気を巧みに表現し、読者を魅了したが、真価は舞台描写にあった。卓越した観察眼で事件の場となる建物や部屋を丹念に描き、虚構に現実感を吹き込んだ。ちょうど「鍵のかかる部屋」が普及し始めた時代背景を捉え、「密室トリック」を日本のミステリーに持ち込めたのも、社会の変化を見抜く洞察力の賜物だったのだろう▼観察の力は建設の営みにも通じる。敷地の条件や光、風の流れ、人の動線を見極めることが、よりよい住環境を生む。とりわけ災害級の暑さが常態化する今、快適な住まいを実現する工夫は一層欠かせない▼10月以降も真夏日が続く地域がある。優雅に読書の秋とはいかないが、乱歩の怪奇譚に身を委ね、背筋を冷やすのも一興だろう。(鸛)
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