コラム

2025年11月13日
 数年前、山あいの国道を走っていて、道の真ん中を歩くクマと出くわした。黒々とした毛並み、地を押しつけるような前足の太さ。ほかの獣とは明らかに違う圧を放っていた。襲われるかもしれないという恐怖よりも、人の道を当然のように歩くその自然さに、境界の揺らぎを強く感じた▼かつては山と里の間に、畑や薪場、子どもの遊び場が広がっていた。草を刈り、水を引き、手をかけることで、人の気配が山の縁を守っていた▼その結びつきが薄れた今、クマは静かに里へ降りてくる。餌の減少と狩り手の退きが拍車をかけ、出没や被害が各地で相次ぐ▼道を築き、斜面を整え、風土と共に生きてきた建設の仕事も、元来、人と自然の間を繋ぐ営みだ。失われつつある境をどう描き直すか。山からの問いかけが、私たちにも向けられている気がする。(鸛)
2025年11月12日
 今年の新語・流行語大賞候補30語が発表され、トランプ関税、コメ価格の高騰で注目された「古古古米」、大ヒット映画「国宝」、企業風土などが入った。「エッホエッホ」「ビジュイイじゃん」「長袖をください」といった小欄には聞き慣れない言葉も▼高市早苗首相が自民党総裁選後の演説で発言した「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」がエントリーされた一方で、石破茂前首相に関する「石破やめるな」がノミネートしていないのが、腑に落ちない県民もいるのではないか▼大賞候補は「物価高」か。話題性と当事者意識が重なる。業界でも資材価格高騰に伴う経営面への影響が顕著で、発注者には一段の配慮が求められている。果たして、物価高が流行しない日は来るのだろうか。(鴛)
2025年11月10日
 「やってみせ、言って聞かせて…」から始まる標語は、山本五十六の語録として知られる人材コンサルの十八番。さらに「この言葉には続きがあって…」と進むのが王道だが、確かに2・3節とされる部分は知名度が低い▼というのも資料的な裏付けに乏しく、そもそも第1節からして山本本人の発言か定かでないとか。海軍生活中にあちこちで耳にしたと言う人もいる▼他方、20世紀の米国製造業界では、show―tell―do―checkの4段階からなる訓練手法が確立。流れはまさに「やってみせ」の通りで、育成に際し普遍的な要素と言えるだろう▼にも関わらず未だ研修の場で金言とされるのは、実行が覚束ないゆえか。「背中で見せる」文化が根付く建設技術の継承の有り様は、今こそ再評価の価値があるかもしれない。(鵯)
2025年11月7日
 11月に入り朝晩だけでなく、日中も涼しい日が増えた。過ごしやすいとは言え、少し前まで夏のような気候だったので、身体への負担は計り知れない。今年も身体が慣れないまま冬に突入するのだろう▼冬が近づくにつれてそわそわするのが降雪だ。タイヤ交換の時期には毎年翻弄される。基本、鳥取のまちなかは12月に入ってからの降雪となるので、つい後回しにしがちだが、安全のためにも11月末までには履き替えるほうが良いのだろう▼各県土所局の除雪業務の入札も順調に進む。除雪に携わるある業者の担当者は「毎年心配なのが、雪が降るかどうか」と話す。続けて「かといって、ドカ雪も大変だけど」と本音を覗かせる▼何事も極端な状況は好ましくない。かつての四季のように、丁度良い冬になることを願う。(隼)
2025年11月6日
 1910年の現在、東京・上野に日本初の木造アパート「上野倶楽部」が完成したことに因み、今日11月6日はアパート記念日として制定。日本の住宅建築の常識を覆し、建築や住まい方に大きな変化をもたらした日となった▼それまでの借家の多くは平屋や2階建ての長屋が主流だった。新しい形態の集合住宅として登場した上野倶楽部は、5階建て木造の部屋数約70室という規模。各戸が独立した複数の部屋を持ち、洋風の集合住宅という新しい居住形態を導入させた。「アパート」という住まい方が日本社会に認知され、後の集合住宅の普及の礎となった▼現在の住居は伝統的な要素と現代的な機能が見事に融合したものに。耐震性や災害対策の重視、高い断熱性能と省エネ基準をクリアする日本の卓越した腕前が光る(鴎)
2025年11月4日
 「みんなでやらいや」―民間と行政、大学・研究機関が一緒になって社会的な課題に取り組む産官学連携が盛んに。それぞれノウハウを持ち寄り、欠点を補いながら三位一体となって一つ同じ目標の達成を目指す▼県が工事書類の簡素化に向けた動きを加速させている。ここでは「入札制度」「工事管理」「工事検査」の三位一体での改革だ。検査は監督業務と表裏をなすもので、このほど評定要領と合わせ、監督基準の全体像が見えてきた▼制度については来年度以降、新しい評定の結果を受けての見直しになるが、評定点がどう上下するのか。また、書類簡素化の大命題は解決されるか▼書類づくりを嫌って業界を離れる若者がいるとすれば、それは何とも悲しい。同じ苦労するなら現場の第一線で。ものづくりの楽しさを取り戻したい。(鷲)
2025年10月31日
 記録的な猛烈な暑い夏がやっと過ぎ去り、外を歩くには気持ちがよい季節がやってきた▼歩くと言えば、近年問題になっているのが、歩きスマホ。先日、東京に行く機会があったが、電車から降り、階段を歩いている時でも歩きスマホで視聴を続けている姿を見た。段差につまずいたり、柱に驚いたりする姿を見ているとヒヤリとする。また、周りの人への配慮にも欠ける行為といえる▼建設現場においても、歩きスマホは決して他人事ではない。近年普及の進む遠隔臨場では、撮影者の安全確保が重要な課題となっている。移動中に撮影する行為は転倒・転落といった重大事故につながりかねない。映像を共有する技術が進んでも、安全の基本は何ら変わらない。カメラを構えるその足元に、危険が潜んでいることを忘れてはならない▼時にはスマホを置いて秋の風景を眺めて見るのも良いのでは。(雛)
2025年10月29日
 長く暮らす地域も高齢化が進む。車は多く走っているが歩く人は減り、幼い子供たちが遊ぶ声もほとんど聞かないから、「静か」という雰囲気を通り越して寂しい▼地域住民の目線に立って」とか「実態をよく調査して活性化策を進める」などという言葉を政治家や行政から聞くが、現地に行き本気で声を聞いたのかと思うこともある▼知人から金太郎飴をもらった。一口サイズではなく昔ながらの細長い飴で、慎重に切ると同じ絵柄が出で来て幼い頃を思い出した。飴には罪はないが、形状を言い換えて「どこも似たり寄ったり」とか「個性がない」と言われ、補助金や地域づくりにもこの表現が使われた▼町や村の人口減は進むが、その地に暮らす人や数少なくなった若者の声を聞き、その地に見合った物まねではない戦略と可能性を一緒に考えたい。(鷺)
2025年10月27日
 今月、埼玉県鶴ケ島市の老人ホームで、入所者2人が命を落とす事件が起きた。職員の男が逮捕され、安全であるはずの場所で暮らしが脅かされた現実に胸が痛む▼また今月1日に、改正住宅セーフティネット法が施行された。住宅確保に困難を抱える人々への支援を広げる内容で、空き家や民間住宅を活用しながら安心して暮らせる住まいを社会全体で確保しようという仕組みだ▼建物を整えることは、暮らしを包むことであり、同時に社会の基盤を築く営みでもある。人が人らしく生きるための最小の単位が「住まい」だとすれば、それを支える現場の一つ一つが、安心と希望の礎となろう▼事件が浮かび上がらせたのは、老いをめぐる環境だけでなく、私たち社会のまなざしの在り方かもしれない。誰もが心穏やかに暮らせる場所を、少しずつでも整えていきたい。(鸛)
2025年10月24日
 プロ野球・日本シリーズが明日25日に迫る中、祝勝会恒例の「ビールかけ」の実施が難しくなっているそうだ▼サイバー攻撃に端を発したアサヒグループホールディングスのシステム障害の影響で、ビールの提供が滞っているため。店頭だけでなく、こんなところにも、という印象だ。プロ野球に深く根付き、今日に至るまで続く伝統。元祖である「シャンパンファイト」は、フランスの皇帝ナポレオンがシャンパンが噴き出す様子を気に入り、戦勝記念に始めたとか。球団は、シャンパンなどの代用品の調達に追われている。優勝チームが阪神、ソフトバンクホークスのどちらになるのかだけでなく、祝勝会の風景も気になる▼不足といえば、業界の技術者。慢性的な人手不足で、各社は確保にあの手この手。こちらの代替は、なお難しい。(鴛)
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