コラム

2026年4月20日
 「最近は健康の話ばかりだな」。友人と食事をした際、そんな言葉で笑った。以前は仕事や趣味の話が多かったが、今はここが痛い、あそこが痛いといった話題が増えた▼年を取れば自然なことかもしれないが、体の状態を気にかける機会が増えたのは確か。日ごろから体調を整え、異変を早めに見つけることが大切だとも話した。なかなか実行するのは難しいが▼これは社会インフラにも通じる。八潮市で起きた道路陥没事故から1年が経過し、事故の要因となった下水道管を巡っては、今後、管路の複線化を進める計画が示された。仮に下水管にトラブルが起きても、もう一方に切り替えることで、機能を損なわないようにするという▼下水道管のように人の体は「複線化」することができないが、ストレスなどを抱えないようにする方法論としての「複線化」という備え方もあるのかもしれない。人もインフラも守る技術が必要だ。(雛)
2026年4月17日
 若い後輩記者と話ながら自身の新人時代を思い出す。町役場で初めて聞く地名は難解で、読み書きさえ出来ない。取材でお世話になった多くの方から「地名もわからない者に良い記事は書けんぞ」と、からかわれた。昔話になる▼今もあの地域に行く。昔、地名と場所をしっかり覚えたこともあり、迷うことなく現地に到着する。しかし、昔と違うのは明らかに人が減ったことを感じることだ▼平成の大合併から長い時間が過ぎ、悲願だった自動車道も完成。一方で、若い世代の流出と高齢化はさらに進んだ。便利さを感じる都市部に生活の場所を移すことは仕方ないが、少しだけ歯止めをかけたい▼地域の将来をどう描くのか、幅広い年代の人が知恵を絞り続ける。単なる「再生」という言葉で済ませるのではなく、他の物まねではない地域になればと願う。(鷺)
2026年4月16日
 壊れた機械を分解し、元通りに組み直していく動画が人気を集めている。普段は見えない内部や手仕事に思わず見入り、自分でもやってみたくなるのが不思議だ▼人はどこかが隠れているものに惹かれる。見えないものほど、見えたときの引力は強い▼熊本城では、「特別見学通路」(空中回廊)などで地震からの復旧過程を公開している。本来は立ち入りを制限し工事を優先するところを、あえて復旧と公開を両立させた。完成形だけでなく、過程そのものが人を引きつけている▼米子市でも、湊山公園のSL移設で作業公開の検討が進む。その一端が見えるだけでも、仕事の意味や面白さは伝わるだろう▼つくる過程を見せることが、人の「やってみたい」を引き出す契機になり得る。担い手不足が続く中、ヒントは案外、身近なところにあるのかもしれない。(鸛)
2026年4月15日
 プロ野球のペナントレースが開幕して約半月。新戦力の活躍、ワールド・ベースボール・クラシックに出場した選手の不調など、各チームで明暗が分かれ、調整の難しさが露呈▼セ・リーグの大方の順位予想で最下位とされたヤクルトが、投手陣の奮闘で快進撃を続けるなど、蓋を開けて見なければ分からない展開も。ちなみに、セ・パ両リーグ上位球団によるクライマックスシリーズの開催方式が変更され「日本一」への道のりも変わるのも、どう影響するか▼不調といえば、前年は県西部の土木関係工事で入札中止が頻発した。慢性的な技術者不足などが背景にある中、県と米子市は近く、入札時期の擦り合わせなどを巡って話し合うらしい。「蓋を開けて見れば、参加業者不在」という結果が少なくなるよう、こちらの調整はうまくいくといい。(鴛)
2026年4月13日
 旅慣れた人ほど荷物が少ないという。着回しを考え要否を仕分けし、物によっては現地調達を見込んで、できるだけ身軽に家を出る。「無駄を省く」知恵の一つだろう▼昨今では中東情勢の緊迫化を受け、米航空各社が続々手荷物料金を増額。こうなればただ動きやすいだけでなく、コスト面のメリットも馬鹿にできない▼だが個人が荷物を減らせても、社会はそうはいかない。道路も港も燃料も資材も要るから要るのであって、気軽に置いてはいけないものばかり。備蓄、予備力、迂回路―平時に感じる重さの分だけ、非常時には頼もしく感じられるものだ▼無駄のない仕組みは美しいが、冗長ゆえの柔軟性も時に必要。日増しに高まる地政学リスクは、建設分野に留まらない「国土強靭化」の真価を突きつけてくる。(鵯)
2026年4月10日
 車を走らせていると目に入る建設現場の社旗。風になびくその姿は当たり前の光景だが、そもそもなぜ企業は旗をつくるのか▼起源をたどれば、旗は戦場で味方を識別し士気を高めるためのものだった。やがて商家や職人の世界でも「しるし」として使われ、集団の結束や信用の象徴となっていく。建設業も例外ではなく、現場ごとに異なる人員が集まる中で、どの会社が責任を担うのかを示す役割を果たしてきた▼現代では法令に基づく標識の掲示が義務付けられ、情報の透明性はより厳格に求められている。その一方で社旗は義務ではない。それでも掲げ続けられるのは、単なる識別を超え、企業の姿勢や矜持を示す“見える意思表示”だからだ▼昔は結束のため、今は信頼のため。時代は変わっても、旗に託す意味は案外変わっていない(鴎)
2026年4月9日
 若桜鉄道・因幡船岡駅から望む天満山で、山肌を覆う桜の木1000本が満開を迎えている。智頭町の千代川土手もそうだが、八頭郡内それぞれの桜名所はちょうど今が見ごろ。家族連れでにぎわう▼春の門出に新年度がスタート。各職場で初々しい新人を迎え入れたことだろう。育て方はさまざま。職場を回すには、以前はホウレンソウ(報告・連絡・相談)が鉄則だったが、昨今は「おひたし」(怒らない・否定しない・助ける・指示する)らしい▼また、上司は、若い人の「チンゲンサイ」(沈黙・限界まで言わない・最後まで我慢)のサインに注意が必要だと▼とくに仕事の期限に遅れることは報告しにくい。その際は「なんで出来ないんだ」と叱るのはご法度。「どうすれば巻き返せる」と寄り添うのがいいとか。この原稿も締め切りが迫った。(鷲)
2026年4月8日
 「お先に失礼します」―そう口にするたび、少しだけ勇気がいる。だが、その選択は決して「消極的」ではないらしい▼山梨県富士山科学研究所と東京農工大学がニホンジカを調査した。オスは捕獲の危険がある場所でも、餌を求めて踏み込む傾向が強く、これは他のオスとの争いに勝たなければ繁殖の機会を得られないためだ。例えると成果のためなら残業も引き受ける「攻めの働き方」▼一方、メスは危険な場所を避け、確実に餌を取り、生き延びることを優先する。子を育てるには、何よりも自分が長く無事でいることが必要だからだ▼そう考えると、「早く帰る」という選択も立派な戦略に思えてくる。体力を温存し、明日に備え、余計なリスクを避ける。新入社員が気兼ねなく帰れるように、定時で席を立つ自分に少しだけ自信を持ってみよう。これは逃げではない。シカに学んだ、戦略的撤退なのだから。(雛)
2026年4月6日
 菜の花の黄色が河川の堤防を埋める。寒い冬が長く続いて春は遠いかと感じていたが、季節は確実に動く。暑い夏が来るのも早いかもしれない▼今年も真新しい制服やスーツを着込んで学校や職場に向かう人達を見る。建設業界にも新入社員が入った。技術職は官公庁を含めた「厳しい争奪戦」が続いているだけに、人材の確保はどこも大変だ▼土木や建築を志す若者が減った。この仕事に夢と誇りを持たせるためには先輩方の役割が欠かせないから、懸命に支えているが、一人前に育てるには時間がかかる。「辛抱強く」と話す▼「菜の花」の花言葉の一つに「競争」がある。群生して育つ姿からその名がついたという。今年仕事を始めた技術者の卵にとっては人が減り競争率は低いが、力強い先輩方と競い合う日に向けて茎を伸ばし、花を咲かせてほしい。(鷺)
2026年4月3日
 「風呂キャン」という言葉を聞いたことがあるだろうか。お風呂キャンセル界隈の略で、界隈という言い回しも含め、いかにも若者らしい表現だ▼この言葉はSNSの投稿をきっかけに生まれた。投稿は拡散され、一部では社会問題として扱われたようだ。短いフレーズが人々の共感を呼び、感性をつなぎながら広がっていく。言葉が持つ波及力の大きさに驚かされた▼福沢諭吉は、日本になかった西洋の概念を表すために「社会」や「自由」といった新しい言葉を生み出した。「経世済民」を略し「経済」という言葉をつくった逸話も、分かりやすさを追求した結果として知られている。「風呂キャン」も意味を直感的に伝えている▼建設業界にも初めて聞くと意味が分からない専門用語が多くあり、若者たちにはとっつきにくさがある。言葉は伝わってこそ人の心を動かすので、分かりやすく伝えることの大切さを感じる。(雛)
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